2ページ目/全2ページ ![]() 朝、宍戸亮が登校すると、校舎の玄関口で跡部と忍足がそろって待ち構えていた。 「おい、宍戸。お前、飼い犬にどういう躾をしてるんだよ? 」 「ああ?」 突然、跡部にそんな事を言われても、さっぱり意味のわからない宍戸だった。 自分の家のペットの話が、どうしてここで出てくるのか理解できない。 「そうや。躾は一番大事やろ? なあ、景ちゃん 」 隣で忍足は、したり顔で相槌を打っている。 さらに、跡部は宍戸を睨みながら続けた。 「甘く見ていると飼い犬に噛まれるぜ。痛い目を見てからじゃ遅いからな! 」 「そうそう。噛まれるだけなら、まだしも。尻の毛まで全部抜かれたらしまいやで。 尻の毛だけやの〜て。尻の穴までボコボコに掘られ…… 」 またもや、口が滑って跡部に睨まれる忍足だった。 「とにかく、お前の飼い犬には迷惑しているんだ。きっちり躾しろよ! 」 「そうやで〜、めっさ迷惑や! 」 自分達の言いたい事を好きなだけ言って、去っていく跡部と忍足だった。 (相変わらず、ワケのわからね〜連中だぜ! ) 迷惑をしているのは、二人と幼稚舎時代から付き合っている自分の方だと宍戸は思う。 何となく、むしゃくしゃしながら、宍戸が上履きに履き替えていると。 「宍戸さ〜ん、おはようございます。良い天気ですねぇ〜 」 と、登校してきた鳳長太郎が声をかけてきた。 今日の天気と同じくらい晴れ渡った元気な声だった。 思わず、宍戸は接近してきた鳳の頭を拳で小突く。 「な、何するんですかぁ〜? 宍戸さん! 痛いですぅ〜 」 情けない泣き声を出す鳳に、宍戸は首をかしげながら、こう言った。 「う〜ん、なんとなく、な。そんな感じがしたんだよな 」 「何ですか? その、なんとなくって? 」 鳳のそんな問いかけに、やはり宍戸は悩みつつ、「なんとなく…… 」と言う不思議な 理由を繰り返すだけだった。 直観力に優れている宍戸亮は、やはり《 天性の猛獣使い 》かもしれない。 ただし、対、鳳長太郎に対してだけだが。 第3話 了 ![]() 1ページ目へ戻る |