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   朝、宍戸亮が登校すると、校舎の玄関口で跡部と忍足がそろって待ち構えていた。

   「おい、宍戸。お前、飼い犬にどういう躾をしてるんだよ? 」

   「ああ?」

   突然、跡部にそんな事を言われても、さっぱり意味のわからない宍戸だった。

   自分の家のペットの話が、どうしてここで出てくるのか理解できない。

   「そうや。躾は一番大事やろ? なあ、景ちゃん 」

   隣で忍足は、したり顔で相槌を打っている。

   さらに、跡部は宍戸を睨みながら続けた。

   「甘く見ていると飼い犬に噛まれるぜ。痛い目を見てからじゃ遅いからな! 」

   「そうそう。噛まれるだけなら、まだしも。尻の毛まで全部抜かれたらしまいやで。

    尻の毛だけやの〜て。尻の穴までボコボコに掘られ…… 」


   またもや、口が滑って跡部に睨まれる忍足だった。

   「とにかく、お前の飼い犬には迷惑しているんだ。きっちり躾しろよ! 」

   「そうやで〜、めっさ迷惑や! 」

   自分達の言いたい事を好きなだけ言って、去っていく跡部と忍足だった。

   (相変わらず、ワケのわからね〜連中だぜ! )

   迷惑をしているのは、二人と幼稚舎時代から付き合っている自分の方だと宍戸は思う。

   何となく、むしゃくしゃしながら、宍戸が上履きに履き替えていると。

   「宍戸さ〜ん、おはようございます。良い天気ですねぇ〜 」

    と、登校してきた鳳長太郎が声をかけてきた。

   今日の天気と同じくらい晴れ渡った元気な声だった。

   思わず、宍戸は接近してきた鳳の頭を拳で小突く。

   「な、何するんですかぁ〜? 宍戸さん! 痛いですぅ〜 」

   情けない泣き声を出す鳳に、宍戸は首をかしげながら、こう言った。

   「う〜ん、なんとなく、な。そんな感じがしたんだよな 」

   「何ですか? その、なんとなくって? 」

   鳳のそんな問いかけに、やはり宍戸は悩みつつ、「なんとなく…… 」と言う不思議な

   理由を繰り返すだけだった。




   直観力に優れている宍戸亮は、やはり《 天性の猛獣使い 》かもしれない。

   ただし、対、鳳長太郎に対してだけだが。



                                第3話 了




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